2010年04月28日

ジャズ名盤20(1990-2009)第二回発表ベスト17[Dear Miles,] 【ロンのジャズ人生がびっしりつまった一枚】

ジャズの世界では残念ながら長生きしているスーパーヒーローが少ない。麻薬やら何やらで体を壊し、愛人やらなにやらとの刃傷沙汰に巻き込まれたりして、せっかくの才能が若くして失われていった。

なぜか破壊や暴力を売り物にするロックミュージシャンよりも、ジャズミュージシャンのほうが自分を破壊することが上手だ。



天国でジャムセッションにいそしんでいると思いたいところだが、波乱万丈の人生を送ったのだから穏やかに眠っていてくださいという気持ちもある。

そんな中で60年代から元気にずっと活躍している大御所の皆さんにはこれからもどんどん若手をびしびし鍛えつつまだまだ良いアルバムを出していって欲しいと思う。

Dear Miles, Ron Carter. Blue Note. 2006.

Dear Miles
Dear Miles

ということで、ロンカーターなんだけど、ついつい何かジャズアルバムを買うとくるっと裏返してベースは誰なの、ロン・カーター?と探してしまう。70年代のCTIレコードなんかだとかなり高確率で彼なところがうれしい。

それはさておき、Gone, Seven Steps to Heaven, Stella by Starlight, My Funny Valentine, Bye Bye Blackbird, Someday My Prince will Comeと次々とマイルスの曲がくれば、おお!これはすごいぜひ聞いてみよう!となるに違いない。

でもちょっと待った!

実はこのアルバムはロンカーターが言っているように、ああ、マイルスのトリビュートね、と思われないように、ロンカーターが何年もかけて手塩をかけて育ててきたロンカーター自身のバンドの曲として演奏されている。

だから、うん、あれ?オリジナルではここで盛り上がるはずなのに?とか、あれ、こんなところで加速したっけ?とかマイルスのオリジナルを新しい録音で聞くようなつもりで聞くと相当痛い目にあう。

これは完全にロンカーターが何十年もかけてジャズを弾き続けて体の奥から自分を表現しきっているもの。楽器編成も長年ロンカーターと一緒にやってきた仲間たち。トランペットがいないけど気にしない、気にしない。パーカッションも面白い。

そういう意味では、マイルスと関係のない8曲目As Time Goes Byが妙に気になる。ロンカーターいわく、マイルスの持つ元となる曲を探し出してくる特異な能力を称えてこの曲をロンが選んだということだが、確かに映画「カサブランカ」のテーマのこの曲、マイルスがやっていたら面白かったのかも。

そういうわけで、ただのトリビュートにあえてしないようにした一枚。マイルスの盤のほうとあえて聞き比べてみよう!とかしないでじっくり聞いてもらいたい一枚。

そんな感じなんだな。

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**それにしてもあと三枚で今回の第二回発表も終わりかあ、もう完全現代に追いついたんだもんね。女王様が結構書いてくれているせいもあるけど、早かったなあ。

[スイングジャーナル誌ランキング:2001年からのアルバムは、スイングジャーナル誌のランキングに該当しません]

[初心者・入門者へのお勧め度:マイルスとは関係のない別のバンドだと思って聞くのが正しいでしょう。ちょっとモダンジャズの頃にはなかったパーカッションが自然に演奏に溶け込んでいるのがユニークといえばユニークですね]


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2010年04月21日

ジャズ名盤20(1990-2009)第二回発表ベスト16[Beyond the Wall] 【サックスの極限に挑戦する一枚】

情熱、そうね、情熱よ。大きい小さいの違いはあるかもしれないけど、誰でも情熱を秘めているはず。

あとはそれをぶわーーーと出すか、自分で押さえてみせるか。押さえている人はクールに見せてるのかもしれないけど。それじゃだめなのよ。



やっぱりぶわーーーーと出している人のほうに惹かれるものだわ。だって、やっぱりその人と一緒にいて、何かを一緒に成し遂げている!って気持ちになれるのが大事だもの。

お祭りが終わったら、それはそれでまた休憩して、またぶわーーーと行くのがいいんじゃないのかな。

Beyond the Wall. Kenny Garret.2006. Nonesuch Records.

Beyond the Wall
Beyond the Wall

ということで、同じサックスでも以前紹介したブランフォード・マルサリスとはぜんぜん違う[過去記事あるわよ!]アプローチの彼、ケ二ー・ギャレット。なんか永遠の青年みたいなイメージになっているけど、これは2006年のアルバムね。

この間チックコリアと一緒に日本に来た時もこんな感じでさっぱり年を取らないわね。でもこの人デビューはずっと前なのよ、マイルスのアマンドラで吹いてるんじゃなかったかしら。あ!また部長〜〜アマンドラ紹介してないわねー

Amandla
Amandla

それで、このアルバムなんだけど、すごい情熱よ。これだけサックスで力を振り絞って泣き叫んだり悲鳴をあげたりするのは今のスタイルの人でいないんじゃないかしら。どうしてもスムースジャズのせいで上品な楽器みたいに見られがちだからね、最近は。

少しだけクラシック調を感じるところはあるんだけど、どの曲も重くてかっこいいのよ。それからちょっと覚悟して欲しいのは結構長いのよ一曲一曲が。

そんな中でも一番すごいのは6曲目Kiss to the Skiesかな。前半、歌のコーラスが繰り返すテーマをバックに、ゆっくりと、でも軽やかにスタートして、だんだんそれぞれの楽器がソロを取っていって、4:13から出てくるソロ。これ多分、テナーを吹いているファラオ・サンダースよね。彼もすごい大物よね。なんかケニーの情熱に惹かれていろんな大物が集まるのかしら。その後で高い音でがーんとやって来るのがケニーよね。7:00ぐらいからはもう、どこまで行くの?っていう感じの吹きまくり。最後の部分のロックでいう「ドタバタ」(みんなでどたばたやるところね)これ、もう絶叫だわよ、絶叫。なんかチックコリアと来た時もこんな絶叫やってたけど…

他にすごいのは5曲目のクラッシクのようでもあり、何かディズニーの中国関係映画のサントラのようでもあるTsunami Songね。日本風の曲名にしちゃったけど、中国のメロディーで二胡を弾くってどういうこと?ケニーって日本大好きって噂聞いたけど、やっぱり、中国と日本を分けるのは欧米人には難しいか・・・同じゆったりとしたクラシック調でもブランフォードマルサリスとは違って、こっちは次はどうなるの、どうなるの?って気になって寝てなんかいられないわ。

なんかとっても中国映画の上等なサントラという感じ。上海万博でPRソングが実は日本のシンガーソングライターが昔書いた曲って、事件が数日前あったみたいだけど、このTsunami Songでも使ったほうが良かったんじゃないかしら。しかもケニーはぜんぜん吹いていないわよ??

7曲目のNowはとってもジャズらしいし、最後のMay Peace be upon Themはもう一回絶叫が聞けるわよ。

弱よわしいけど華麗に聞こえるように装っている、今風のサックスの音に思いっきり喝を入れる一枚ね。


[スイングジャーナル誌ランキング:2001年からのアルバムは、スイングジャーナル誌のランキングに該当しないわ]

[初心者・入門者へのお勧め度:後期コルトレーンくらい重い最近のサックスプレイヤーっていないのと聞かれたら、真っ先に勧めるわね。でもコルトレーンと一緒で毎日聞くのは大変かも]




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2010年04月14日

ジャズ名盤20(1990-2009)第二回発表ベスト15[Cosmopolitan Life] 【チョイ悪親父二人が真剣に殴りあう一枚】

男が男の魅力を保ち続けるのは難しい。20代のときは精悍だった面構えも結婚してだるんとごろんとした生活を二年もすればあっという間にあごがたるむ。

「幸せなのねー」などと周りが冷やかしてくれるのも最初のうちだけで、その後仕事に打ち込み夜食を食べたり飲み会を重ねるとあっという間におなかがたるむ。



さらにこれはまずいと思いながらも係長や課長になるとデスクワークばかりであっとういう間に体全体の筋肉がたるむ。

いつでも殴り合えるぞという20代の時の自信はどこへやら、気持ちだけはまだあるような気もするが、階段を3階上るのもひーひーはーはー息が切れる状態だ。

Cosmopolitan Life. Al di Meola & Leonid Agutin. 2005. Victor Entertainment.

Cosmopolitan Life [DVD] [Import]
Cosmopolitan Life [DVD] [Import]


そんな感じで大人が真剣勝負で殴り合っているようなこのアルバム。

かっこいいなあ。あこがれるなあ。ラテンの曲調に乗ってボーカルのレオニド・アグティンとギターのアルディメオラが殴り合っている。

このレオニド・アグティン、ラテン系の人かと思ったら大間違いで、なぜかロシア人、しかもこのアルバムは全曲作曲までして英語で歌っているという才人だ。

そういう意味ではコラボレーションをしているアルディメオラがアルバムジャケットで前の方に座っていたりするのはどうなのかなとも思うが、あまりアメリカでは知名度がなかったのだろうからディメオラの後光をちょっと拝借したということで許してあげようか。中ジャケットではアグティンのほうが当然前に出て写っている。

どの曲もキャッチーでこんなかっこいい歌入りアルバムは聴いたことがないぞと言うくらい。

その中でも2曲目Cosmopolitan lifeと三曲目Nobodyは圧巻だ。アグティンの色気のあるチョイ悪親父の軽くしゃがれた声にノックアウトされる。それだけでなく、その歌が盛り上がるところでちょうどよく、本当にとても格好よく割り込んでくるディメオラのソロが見事。Cosmopolitan Lifeの02:55からのソロの入り方はああ、始まるのか、始まるのかああと背筋がぞくぞくする。

ちょっとアーバンラテンな六曲目Smileもかっこいい。とにかく歌声につやと濃厚な息吹があって官能的なのだ。心の奥深くしまった苦しみを吐き出すように歌うミドルテンポの10曲目Shade of your worldもちょっとオルガンと指のスナップでわざとらしいアレンジのような気もするが絶品だ。

何度聞いてもチョイ悪中年親父二人のむんむんした熱気に参って、もう一回聞きたくなる。ディメオラファンとしては速弾きに関してはもっと速く、もっと速く!と言いたくなるところがないわけでもないが、ソロのアルバムではないので仕方がないとして、こんな多彩なバックをこなして意外な一面が見られてうれしい。

できればパートIIをはやく作ってほしいものだ。アグティンのソロは他にも色々出ているのついつい聞いてみたくなる。

[スイングジャーナル誌ランキング:2001年からのアルバムは、スイングジャーナル誌のランキングに該当しません]

[初心者・入門者へのお勧め度:歌盤に飢えている人はぜひぜひ手に入れてください。私が買った盤では最初の二曲DVDもついています。それと五月にディメオラ先生が日本に来る!うーむむ、仕事がなければいけるんだけど]




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2010年04月07日

ジャズ名盤20(1990-2009)第二回発表ベスト14[Eternal] 【安心して身を寄せることができる一枚】

大好きな人と居るってことは、そうねえ、ちょっとどきどきしたり、緊張してしまうところもあるけど、本当に好きな人とだったら、不安なくその人のすぐ傍でぐっすり寝られるってことじゃないかしら。



緊張してしまうってことはまだ警戒しているってことね。自分を任せられないってこと。本当に大好きな人なら私を任せることができる。安心できる。

Eternal.Branford Marsalis. Marsalis Music/Rounder. 2004.

Eternal
Eternal

ということで、ブランフォード・マルサリスのこのアルバムなんだけど、もうすごい安心なのよ。一曲目の少しモロッコ風のゆったりとエキゾチックなThe Ruby and the Peralから最後の7曲目Eternalまでずっと安心して身を任せられる。

え?それってまさか聞いている間に寝てしまうってことじゃないのかって。そんなことないわ。ちゃんと聞いているわよ。ただそうね、一曲目のThe Ruby and the Peralのテーマが終わったぐらいのところから夢か現(うつつ)か分からないような穏やかな気持ちになって、最後のEternalの11分36秒ぐらいのところでぐっと現実に連れ戻される。

そんな感じよ。

え?つまりアルバム一枚聞いている間ずっと寝てしまうってことじゃないかって。そんなことはないわ。このアルバムはスイングジャーナルでディスク大賞を取ったアルバムよ。大賞よ、た・い・しょ・う。

ただ、前に紹介したJohn PatitucciのSongs, Stories & Spritualsもそうなんだけど[過去記事あるわよ]、この時期いろんなジャズメンの間で、ジャズとクラシックとを融合させようとした動きはあったみたいで、うまく行っているといえるかどうかは難しいところね。

ジャズは何かと接木されることで命を吹き返した音楽であることは確かよ。これまで何度もそうだったわ。マイルスが電子楽器と、ハンコックがファンクと、RTFがラテンとクラシックと。フュージョンもスムースジャズもそう。それは多くのジャズメンがやってきたことだわ。

何と接木するかでジャズという音楽の色が変わってそれはそれで面白いんだけど、やっぱりよーく考えないと特にクラシックっぽくする場合はいろいろ弱さとアラが出るわよね。

ジャズバンドはオーケストラと違って音数が少なくて全体が薄いわけだから個々の演奏者がものすごいカリスマだとか、曲がものすごい刺激的だとか、楽器の音色がすごい艶やかだとか、そういう部分がないと結構辛いところがあるわけ。

融合した結果、ジャズらしさも弱まってクラシックのようなところも弱まると気になるのよね。

でも、それがこのアルバムの場合、分かりやすいとか聞きやすいとか、弱く聞こえるところが案外プラスのほうに働いているとは思うから、ま、あまり苛めないで良しとしてあげましょうか。

[スイングジャーナル誌ランキング:2001年からのアルバムは、スイングジャーナル誌のランキングに該当しないわ]

[初心者・入門者へのお勧め度:安心して最初からずっと聞けるという意味では本当にすごいアルバムだわ]

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