2009年10月28日

ジャズ名盤20(1970-1990)第二回発表ベスト16[Sophisticated Lady]

【ベテラン二人の楽しそうな一枚】

 前回に引き続き大御所の登場。音楽は楽しいのが一番なんだなあ。それも演奏している人たちが楽しければ回りはどうでもいい(?)じゃない。まあ、そこまでは言わないが演奏している人たちが楽しくなさそうだと聞いているほうも辛いのは確かだ。

Sophisticated Lady. Ella Fitzgerald & Joe Pass. 2001. Pablo Records.

Sophisticated Lady
Sophisticated Lady
*1983年の東京、1975年のハンブルクの演奏を一つにまとめたものです。

というわけで、ベテラン二人の演奏でCDが世に出たのはつい最近のようだが、録音自体は1−8曲目が1983年の東京、9−14曲目が1975年のハンブルクとなっている。

もしかするとこのブログの読者にもこれを見に行けた幸せな人がいたのかもしれない。

確かにファンも幸せそうだ。特に東京の方は拍手の音の大きさや気合がハンブルクと違う。もっとも日本が輝いていた頃、外タレ(これは死語?)をいくらでも自由に呼べた時代。日本でコンサートをやれば海外の無名の若手がその後母国や世界で売れた時代。そんな時代に日本に来た大御所二人の演奏は実に巧みだ。

ちょっと気になるのは、この編成、エラの歌とジョーのギターしかないところだ。ドラムもベースも何にもない。しかしそこは精密なギター職人、ジョーパスだから、まるで一人で何人もが弾いているかのようにバックの演奏に隙がない。抜かりない。

更に一番の気になるところは、ジョーパスが一人でギターを弾いている10曲目Waveとか11曲目Cherokeeとかだ。もちろんギターファンはその精密なコードメロディーの造りに惚れ惚れとするし、ノリのいいリズム感にも驚く。しかし、エラは、いったいエラは!

この間何をしているのだ?

まさかじっと相棒のジョーをずっと見詰めているのか、それとも衣装チェンジのため裏に引っ込むのか。この辺りがもったいない。出来れば全曲、歌をつけて欲しかった。もちろん歌詞がもともとない曲であってもなんかヤバダバヤバダバとでも歌って欲しかった。

そういう意味では、しっかり歌が入っている6曲目Georgia on my mindやヤバドゥビヤバドゥビ言っている8曲目Bluesetteが面白い。ブルース・エットじゃなくて、ブルーゼーと言っているところも参考になった。

でもこの不思議な二人のケミストリーが一番味わえるのはスローな12曲目Take Love Easyかな。このエラのふっとい低い声、またすうーと上がる高い声。自由自在に優しく語りかけるようにゆりかごを揺らすように歌いかけるのは本当に気持ちがいい。

エラ&ジョーというよりエラ&ジョー&ジョーだけ、みたいなアルバムだが、この時期にもベテランは健在だったのを知ることができる一枚。


[スイングジャーナル誌ランキング:入っていません]

[初心者・入門者へのお勧め度:ジョーのギターには惚れ惚れしますが、もっと二人のケミストリーを響かせて欲しかったと思う一枚です。しかしこの二人は結構長くツアーをやったようで、うらやましいですね。ちなみに誰かウィキペディアのエラのディスコグラフィーをもっと更新してください。]


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2009年10月25日

ジャズ名盤20(1970-1990)第二回発表ベスト15[Studio Triste]

【アランフエスの圧巻の倦怠感が今再び】

 フュージョンが盛り上がり、そろそろブームも終了というとき、往年のベテラン・ジャズプレイヤーは何をしていたのだろうか、というのがとても気になるが、70年代の「CTIマジック」を放ったベテランたちは商業的には分からないが、音楽の完成度としては頂点に達していた。

70年代に活躍した、デオダードやジムホールらの、あのベテランたちの音をもう一度聞きたい!というのは誰もが思ったに違ういない。しかも80年代の高音質、録音で。

Studio Trieste. Jim Hall. 1982. CTI.

スタジオ・トリエステ(白鳥の湖)
スタジオ・トリエステ(白鳥の湖)

ということで、あの「アランフエス」([Concierto.2008年12月15日記事参照])よ、もう一度!という感じで、ジムホール、チェットベイカー、スティーブガットが集まった82年のアルバム。ロン・カーターがいない。入っていればアランフエスの再現セッションなのだが、ちょっと寂しい。しかし、このアルバム、あのアランフエスの陰鬱で退廃的で倦怠感のある不思議な音の連続がまた楽しめる一枚。

80年代というすこし忙しい時代を反映しているからか、それぞれの曲が短くなっているのが寂しい気もする。とは言っても一曲目のSwan Lakeは8分42秒もあるから、今の感覚で言えば十分長いが、アランフエスはなんと19分17秒もあった。まあ、アランフエスが長すぎたということなのだろうか。もっともアランフエスもこのアルバムもいくら長くでもぜんぜん飽きが来ない。一日中、ずっと続いても良いような不思議な感覚があるから面白い。

CTIはクラシックの曲を取り上げるのが一つの特徴だったわけだが、この一曲目、スワンレイクのあの有名なテーマの後に繰り広げられる倦怠感たっぷりのチェットベイカーのソロは最高だ。

二曲目All Bluesでもチェットのソロはたっぷり聞ける。ヒューバートルイスのフルートもその倦怠感に輪をかけて不思議な雰囲気を出している。フルートはジャズではちょっと出すべきか出さないべきか迷うような楽器だと思うが、適切なところに組み込まれると、サックスよりもよっぽど表現力がある。その後のエレピソロの倦怠感も圧巻。

大体「倦怠感」が圧巻という表現がおかしいと思うが、アランフエスといい、このスワンレイクといい、そういう倦怠感がぐいぐい押し寄せてくる。フュージョンのしゃきしゃきした若さ一杯みたいな音に慣れた人にはどうなのかわからないが、この退廃的な感覚は人間誰でも本能的に持っていると思う。

三曲目Malaguenaはお!アランフエスの再来?と一瞬思わせるオープニングでその後期待を裏切ってパーカッションの速いリズムからアップテンポになるラテン曲。ちょっとそれでもラテンフュージョンとは何かが違う。曲の展開がアルディメオラ風になってしまうところが驚きだが、しかしそこはジムホール、やはりジャズの弾き方でどんどんつなげていく。曲調は似ていても、チョーキング+速弾きで押し通すディメオラとはぜんぜん違うものになっていく。

真に圧巻なのは最後のDjangoだ。MJQがやった[2008年12月24日記事参照]曲だが、フランスのジプシー・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハートに捧げた曲だ。最初のテーマをチェット、ヒューイ、ジムの三人が少しずつゆっくりと音を重ねていく。最高だ。とても物悲しい。物悲しいのが圧巻だというもまた変だが、MJQのほうは淡々としていた追悼曲のようだったが、何かこちらは心をえぐられるような感じがする。

ジャンゴがいなくなったことがどれだけ悲しみを与えたのか。これを聞くと分かる気がする。

全体に全員の演奏が細部までうまく重なりこれ以上の憂いをたたえたアルバムはないのではないかという造り。傑作だ。

[スイングジャーナル誌ランキング:入っていません]

[初心者・入門者へのお勧め度:アランフエスと甲乙つけがたい出来です。これだけの寂しさ悲しさを表現できるのはこの人たちしかいないのでしょう。]
posted by ロック小僧 at 21:17| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月18日

ジャズ名盤20(1970-1990)第二回発表ベスト14[Invitations]

【フュージョンが終わったと認識された時代の完璧なフュージョンの一枚】

音楽は人に聞いてもらいたいという欲求と人に真似されたくないという矛盾をはらんだ両方の欲求を内包している。

誰も聞いてくれなければとても悲しい。真似されすぎると音楽が陳腐になり面白くない。

そこでミュージシャンは、ひたすら頑固職人のように自分のやりたいことをやるか、または時代に合わせて柔軟に自分を変えていく、それも時代に先駆けてちょと早めに自分を変えていくかのどちらかの究極の選択を迫られる。

ローリングストーンズや今でもバップをやっているような人たちは前者だし、ビートルズやマイルス・デイビスのような人は後者だろう。

どちらが成功するのかと言われるとなんともいえない。しかし、一つだけ分かっているのは同じようなスタイルで演奏するグループがわらわらと現れたそのとき、流行は終焉に入ったということだ。

Invitations. Shakatak. 1982.Polydor. Ltd.


インヴィテーションズ(K2HD紙/ジャケット仕様)
インヴィテーションズ(K2HD紙/ジャケット仕様)

というわけで、どの曲もどの曲も文句がつけようがないシャカタクのインビテーションズ。輸入版ではもう存在せず、日本版だけになってしまうのはシャカタクがイギリスのバンドだからなのだろう。

それにしても私が現役高校生だったとき、ちょっと年上のバンドはウェザーリポートを、自分と同じような人たちはこのシャカタクとか日本のフュージョンバンドのコピーで溢れ返っていたなあ。

クラスに一人フュージョン好きな友達がいて、Friday Night in San Francisco[10月8日記事参照]や日野皓正のレコードを貸してくれた。その後彼は亜蘭知子とか刀根麻理子など女性ボーカルにはまっていったが、フュージョンの「音」はもう楽器演奏が好きな大人の音楽ではなく、明らかに大衆のものになっていた。

自分も当時、アルバムの一曲目、インビテーションはシャカタクだと知らず、これをアマチュアバンドがやるたび、「お、八神純子をまたやってるな!」と勝手に八神純子の曲だと思って聞いていた。それだけ、普通の音楽に聞こえた。もっともメロディー回しがちょっとイーグルスのホテル・カリフォルニアみたいなところもあって、「すごいな、八神純子は。『水色の雨』からして日本人離れしていたもんな」などと更に勝手に深く解釈していたが、実はこれがシャカタクだった。

二曲目ルーズ・マイセルフもこのコーラスの入り方はすごいあっちでもこっちでも使われたような使い方だなあ。ベースがびこんびこんチョッパーで響かせるのも一世代前のスタンリークラークと違って当たり前になってしまったし。

三曲目ロンリー・アフタヌーンはスローな女性ボーカル入りで、ちょっとだけダイアナロスに似た性質のかわいい声でこれもお手本のような佳作。歌の後にサックスがソロをとるなどという、今聞くともういかにもなスタイルだが、しかし文句のつけようがない。

四曲目はまた八神純子風になり、五曲目はまたコーラスだけ女性ボーカルが入るシャカタクスタイルになり、七曲目ソル・フエゴなんかは速いテンポで全員の演奏力を競うような曲になっている。

最後インシャドウズはゆったりとしたピアノ曲でもちろんピアノの演奏力も高い。

アルバム全体ですばらしいシャカタク色が出ていてそれに統一されている。全体にこの音作りは当時、凄い流行った音作りだったんじゃないのかなあ。前述の亜蘭知子とか刀根麻理子もこんな音だったし、ちょっと聞いいただけで、歌謡曲も含めて、お!あの時代の典型的な日本の音!というところが面白いような悲しいような。

でもみんながみんなそうなると流行は終わり。やはりフュージョンの終焉はこのあたりで来たんだなと実感してしまう。

ライナーに書いてあることが面白い。「某雑誌に『フュージョンをつまらなくしたのは誰か!?』などという特集を組まれるようでは、フュージョン界もちょっと考えなおさなければならない時期に来ているのだ」とある。ライナーを書いている人たちですら、ブームが終わっていることを知っていたんだね。

ブームが終わったという共通認識の中出てしまった文句のつけようのないアルバム。残念ながら、時代はこの後MTV時代に突入し、ジャズ・フュージョンは商業的には苦戦していく。

[スイングジャーナル誌ランキング:入っていません]

[初心者・入門者へのお勧め度:歌謡曲とフュージョンの境界がなくなるほど融合しそのせいでブームが終わった…というのを実感できる一枚です。ジャケットもジュディオング風です。しかし彼らに非があるわけではないような…]
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2009年10月17日

ジャズ名盤20(1970-1990)第二回発表ベスト13[Offramp]

【フュージョン嫌いが作ったフュージョンの傑作の一枚】

1981年というのはフュージョンの最後の当たり年なのか、次から次から傑作が生まれてきた。その多くは70年代にでデビューした若手が円熟味を増し、演奏技術が最高に達したから生まれた傑作なんだろうが、それにしてもこう傑作が多いと一体どれを取り上げようか迷う。

そんな中でも、あのジャコパストリアスがメジャーデビューする直前、ジャズとはこうあるべきだとフロリダの屋上部屋で共に熱く語り合った[2009年01月03日記事参照]このギタリストをずっとはずし続けるのは不公平な気がするので今日は紹介したい。


Offramp. Pat Metheny Group. ECM. 1981.


Offramp
Offramp

ということでパットメセニーのオフランプ。ECMから出ているわけだが、ECMのジャケットはうまいなー。ついつい、惹きつけられるなあ。ジャケット買いをしたのがもう何枚もあるよ…

で、内容はというと、一曲目はうん、これはなんか子どもにおもちゃのシンセサイザーを買ってあげると嬉しくてパオーパオーとか象さんの真似事をして遊ぶような曲だね。バックも変なインド風だし。どうもこのころ流行っていたギターシンセというのは、うまく使わないとおもちゃっぽくなるなあ。この曲はパス。

二曲目Are you going with me?はまたギターシンセだが、こっちはうまくツボにはまっている。ゆっくりしたメロディーがあるようなないような物悲しさが漂い、曲が進むにつれてだんだん展開が出てきてどんどん盛り上がる。ギターも多分ホーンのつもりで弾いていてフレーズがギターのそれではない。ここまで徹底するとギターシンセにした甲斐がある。うーん、なかなかの傑作。

三曲目Au Laitは出だしがちょっとトーリ・エイモス風だが、その後「ウッシャー」とかいうゾンビの吐く息が聞こえてくる。なにか怪奇映画のサントラ音楽風。うーん、本当にこの人ってジャコと熱くジャズを語り合った人なの?

四曲目はアップテンポでノセようとする曲なんだろうけどラリー・カールトンを知った後ではちょっと今ひとつノレないなあ。中途半端だ、これもパス。

五曲目は凄い。これは凄い。ギターシンセでフリージャズをやっている。何でもメセニーはオーネットコールマンをコピーしたりしていたそうだけど、その鬼気迫る感じは良く出ている。

六曲目のジェームスは今のフォープレイみたいなスムーズジャズ。これフォープレイの演奏ですといったら、みんな納得するくらいそっくり。メロディーもすぐれていて覚えやすい。傑作。

最後七曲目は環境音楽風のシンセがずっと白玉で流す曲。だが、こういう環境音楽の海の波みたいな曲がこの時代に出てきて、その後独立した音楽に育っていったところをみると、こういう切り口を最初に作ったフージョンの人たちは意外なところで功績を残したといえるのかもしれない。

シンセで環境音楽などというと、当時喜太郎ぐらいしかなかったけど、80年代にはディメオラですら、ギターシンセを手に取り似たようなことをやり始めるのだから(評判は悪かったようだが)、こういう癒しの音楽みたいなものを作り始めて一つの売れるジャンルとしてフュージョンミュージシャンが仕上げていった。これは音楽の歴史の中でも意図されなかった意外な副産物だったと思う。

もっとも本家のフュージョンはこの81年を境にだんだんポシャって行くわけだが…

このメセニーのアルバム、全体に変化があってどの曲も同じでないのがいいのか悪いのか。私はだめだと思う。傑作の曲を他の曲がぶち壊し、どうも屋上部屋で熱く語ったメセニーのジャズがなんだったのか見えてこない。

それでもこのアルバム、この時代を感じるには十分面白い一枚だと思う。

[スイングジャーナル誌ランキング:入っていません]

[初心者・入門者へのお勧め度:メセニーが語ったジャズはもう少し後の時代になり、ジャズに彼が戻ってくるとき明らかになるようです。彼はフュージョンの悪口をさんざんジャコのレビューで言ってますが、その彼がフュージョンブームがあったからメジャーでミュージシャンとして生活できたのは皮肉ですね]
posted by ロック小僧 at 19:05| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月08日

ジャズ名盤20(1970-1990)第二回発表ベスト12[Friday Night in San Francisco]【音楽の神が憑依した戦慄の一枚】

90年代にアンプラグドという奇妙なブームがあった。ハードロックやらなにやら激しい音楽をやっている連中が神妙にいすに座って自分の持ち歌を生ギターで弾く。

エリッククラプトンのレイラはかなりアレンジもされていてバックの人間も凝っていてMTVで見ていて面白かったが、他は最悪だった。マイケルシェンカーのUFO時代のユーキャンロックミーのアンプラグドをCDで聞いたが、ただエレキを生ギターにしただけだった。

ブームはあっという間に終わった。やはりエレキ系の音楽をやっている人間がただ生ギターに持ち変えればいいというものではない。生ギターには生ギターの魂があり、それをゆさぶり目覚めさせることができる人間は少数なのだ。

自分がブームを冷ややかな目で見ていたのは、これ以上のアンプラグドはないだろうという名盤をアンプラグドブームのずっと前の高校生時代に知っていたからだ。


Friday Night in San Francisco. 1981. Al Di Meola, John Mclaughlin, and Paco de Lucia. Columbia.


Friday Night in San Francisco
Friday Night in San Francisco

物悲しいアルペジオで始まる一曲目Meditteranian Sundanceはリズムを刻みながら徐々に三人のボルテージが上がっていく。それに伴い衝撃的な信じられないスピードでソロが展開する。それも揃いも揃った名手三人の超高速の流麗なフレーズ。すさまじい速さでありながらしっかりと楽曲に組み合わされたパッセージ。いくら速くても絶対にミスらない機械のように精密でありながらも繊細な三人。はちきれんばかりのテンションの高さで最後に開放される!

信じられない。絶句した。しかし曲の美しさに引き込まれ、ぐいぐい聞き進んでいく。四曲目のFantasia Suite for Two Guitarsはとてもかわい感じで、まるでギターが何かのパーカッションにでもなったようだ。

かわいい感じでほっとするのもつかの間、また最後のGuardian Angelで凄まじいまでの三人のテンションに巻き込まれる。

また絶句。本当に彼らは人間なのだろうか。人間がここまで楽器を弾くことができるものなのだろうか。音楽の神というのが存在するのならまさに今ここに、この彼ら三人に憑依しているのではないだろうか。

[スイングジャーナル誌ランキング:入っていません]

[初心者・入門者へのお勧め度:今はいろんな情報が入手できるようになってやっと分かったのですが、三人でやっているのは最後の二曲だけなんだそうで、後は二人のいろいろな組み合わせでやっているそうです。初めて聞いたときどの部分が誰なのかずっと悩んでいましたが(ウィキペディア『ライヴ!』参照)なぞが解けました。それから、ユーチューブでアルがデヴィットレターマンズショーに出て、Fantasia Suiteを弾いているものがありますが、インタビュー部分で、偉大なギタリストを三人挙げてくれといわれて、ジャンゴラインハート、ラリーコリエル、あともう一人聞き取れない人をあげていますが、こんなところに彼のルーツがあったとは意外です]
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2009年10月07日

ジャズ名盤20(1970-1990)第二回発表ベスト11[The Clarke / Duke Project]【現代ポップスの雛形になった教科書的アルバム】

今日もちょっと時間ができたのでおいちゃんのCD屋に行ってみる。人に頭を下げる仕事もなれてきたが、おいちゃんの店は仕事から自分を切り離すことができるオアシスのように最近つとに感じる。

ジャズ喫茶なるものが昔は流行ったそうだが、きっとこんな感じのほっと安らぐ不思議な空間だったのだろうか?

そういえばおいちゃんからは宿題が出ていた。リターントゥフォーエヴァー(長いので以下RTF)で変な「宇宙志向」があるのはだーれだ。

という問題だった。RTFには腐った安物SF音楽みたいなメロディー回しや大げさな雰囲気があって、これがどうにも好きではない。家に帰ってチックコリアが入っていた頃のマイルスを聞いたが、チックにはそんな趣味はなさそうだ。アルディメオラはラテン志向で、宇宙志向はない。となると、まさかまさか彼なのか・・・

お:はい、あたりだよ。スタンリークラークに決まってるじゃないか。

部:うーん、そうなの、スタンリークラークはジェフベックとやったロックンロール・ジェリーとかソロのスクールガールとか知ってるよ。でもそんな気配はあったかな?なんか証拠は?

お:あるよ、これ!

とおいちゃんは何やらコンパクトなボックスセットを一つ出した。スタンリークラークの全盛期のときの5枚のアルバムが一気に入ったボックスセットだ。

最近Sony BMGからはジェフベックなどほかの大物も同じボックスセットで売られている。あの頃、レンタルレコード屋で高額で一枚一枚を借りていた身としては、最高に輝いていた当時のスーパースターが安っぽい紙の箱に大量に納められているのをみるのはうれしいようで実はとっても悲しい。

おいちゃんがその中の一枚を取り出す。Modern Manというアルバムだ。

お:これはもう単発では手に入らないアルバムなんだよ。良かったじゃないか、ええ、ボックスで復活して(おいちゃんは江戸っ子なので、江戸弁を想像してください)。

といってCDをかける。うわ!これほんと?何かのB級SF映画のサントラみたいだ。こういうと失礼だが、チョッパーびしびしの黒人の長身の男が妙なSF志向があるとは思わなかった。ちなみにこのModern Manにあのベックとの名競演ロックンロールジェリーも入っている。

お:お徳だよ、買いなよ。後悔しないよ。

部:い、いや、ちょっとこの安っぽいSF調にはどうにも吐き気が・・・う、うん?

そのとき箱に収められている五枚の中にぴかっと光るマッチ棒頭があった。

The Clarke / Duke project. Sony. 1981.
The Clarke/Duke Project, Vol. 1
The Clarke/Duke Project, Vol. 1

念のためボックスセットのほうも
Original Albam Classics. Stanley Clarke. Epic/Sony BmG. 2007.
Original Album Classics
Original Album Classics

マッチ棒頭というのは要するにアフロヘアのことなのだが、多分中学生のときロッキンFで始めてみたアフロ頭はスタンリークラークだったと思う。そのスタンリーの頭の二倍はある大きさの太いマッチ棒がスタンリーのマッチ棒と仲良く並んでいる。

部:こ、これは、ジョージデュークのSweet Babyが入っているじゃない?

お:おお、そうだよ。流行ったねえ。

部:ソウルのゆったりしたバラードがかっこいいと思ったのはこれが初めてじゃないけど、つぶやくように歌い始めて突然裏声で訴えかけるようなこの歌い方。なんかこの後のMTV世代のルーサー・バンドロスとか絶対にヒットするブラック・コンテンポラリーの雛形になったというか。

お:まあ、黒人が裏声で歌うのはずっと昔っからだけど、今風のというか80年代の必殺パターンの先駆者だあな。

部:うーん、まさかスタンリークラークとやっている曲だとは思わなかった。

お:他の4曲目I just want to love youなんて、ほんとその後のMTV音楽の母体になったような気がするし、Never judge a cover by it's bookなんて短いけど、何十曲ものポップスがこのスローで陰鬱な感じのパターンを真似しているよ。

部:うーん、出たのがまだ81年だということを考えると、まさに先駆的、その後のポップスの教科書になるようなアルバム…

お:そうだよ、買いねえ、買いねえ、ロック部長は作曲が好きなんだろ?今ならただでスタンリークラークのほかの四枚もついてくるよ!

部:・・・

[スイングジャーナル誌ランキング:入っていません]

[初心者・入門者へのお勧め度:二曲目オールディーズのルイルイだけはずしたような気もしますが、後は本当に現代ポップスの典型的なパターンが皆聞くことができるお手本のアルバムです。クラーク・デュークは一枚で買えます。ボックスの方はスタンリークラーク、RTFの熱烈ファンならお買い得だと思いますが、そうでない場合はうーむ、どうしようか…]
posted by ロック小僧 at 19:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月06日

ジャズ名盤20(1970-1990)第二回発表ベスト10[We want Miles]【雷撃マイルスが聞ける珍しい一枚】

マイルスデイヴィスをはっきりと嫌いというジャズファンは、昔からのジャズ好きにも私のようなこの数年でマイブームになったような人間にもいないと思うのだが、あんまり好きではないという人は相当多いと思う。

なにせ、名盤とされるビッチェズブリューもインアサイレントウェイもカインドオブブルーも首をひねるような音楽で、これの何が楽しいのだろうか、とよく分からないものが多い。どこかでぶわーと盛り上がるのを期待してじっと聞くのだが、そういう盛り上がりがあると思わせていつも何もない。

マイルスを商品としてみてみると、その見た目や、鋭い目つき、精悍な肉体から発するオーラ、何か非常に情熱的で官能的で激しい音楽をやっているようなイメージがあって聞き手は勝手にそう思ってしまうのだが、これらの「迷盤」にはそういうところがない。

あえて古いアルバムを探せば、マイルストーンなんていうかっこいい激しい曲もあるのだが、むしろああいうものが例外で、マイルスは静かな音楽を中音域を多用して吹く人なんだなと思わざるを得ない。

ところで、マイルス好きの漫画家というのは結構いるようで、新しいところではジョジョの奇妙な冒険の荒木先生(こら!ジョジョネタはやめなさいと言われているでしょ!)とか、古いところでは、BBというボクシングの漫画があって、それを書いた石渡治氏はいくつかミュージシャンの漫画を書いたこともあるせいか、BBに出てくる主人公はボクシングもやるが火の玉トランペットも吹く男で、聞くものすべてが落雷に打たれたような衝撃と感動を覚えるという設定になっていて、これがきっとマイルスの音楽なんだろう、と高校生の頃は思っていた。

実際、新しいの古いのと何枚も何枚もマイルスを買って、ああ、またはずれ、またはずれ、と火の玉落雷トランペットに出会うことはほとんどなかった。

We want Miles. Miles Davis. Columbia/Sony. 1982 (live in 1981)

We Want Miles
We Want Miles

ところがこのアルバムの三曲目Fast Trackだけは違っていた。

このアルバムのジャケットでは、アーミー風のタンクトップにこれまた砂漠の攻撃隊風アーミーズボン、精悍な肉体のマイルスがトランペットを押さえ込んでいるようにうめきもがいている。まさにマイルスのイメージぴったりのジャケットだ。

ああ、まただまされるのか、もうだまされたくない。でもベースのマーカスミラーとかギターのマイク・スターンとか後ろのメンバーは凄そうね、メンバーにだまされて買ってみるか、と買ってみた。

三曲目Fast Trackだけは違っていた!

一曲目のJean-Pierreはまたいつものゆっくりした良く分からないマイルス節の曲で、ああ、やっぱりね、と思わせる。

三曲目Fast Trackだけは違っていた(いいから、早くその三曲目の話をしてよ)。

二曲目のBack Seat Bettyといういかにもアメリカン・ハードロックみたいな曲名の曲もマーカスのチョッパーベースがビュンビュン鳴るが結局やっぱりまた例のインアサイレントウェイのような深海をアンコウが泳いでいるような音楽だった。ああ、もうマイルスはどうでも良いや。いっそ大嫌いになれたら良いのに。

ところが、三曲目Fast Trackだけは違っていた!すごいぞすごいぞ!これは一体なんなんだ!本当に本当に落雷に打たれたような凄さだ!かなり早いビートのリズムを超高音域ですさまじい速さのマイルスが駆け抜けていく。まさに凶悪な殺人マシンガンをトランペットに置き換えたような凄さだ!

高校生のとき読んだBBの一場面、アメリカに密入国するBBが、船の甲板で死んでしまった友人のために嵐の中トランペットを吹く。雷撃に打たれたようになって動けない周りの毛むくじゃらの水兵。そのイメージにぴったりだ!

マイルスはこういう曲もできたのか…なんでこういう曲をもっとやらないのだろう。

結局残りの曲はまたいつものマイルス節に戻ってしまう。もっと落雷を!もっと火の玉を!という気持ちがまた出てくる。

見事にイメージ戦略にやられてまたなんか別のアルバムを買ってしまうんだろうなあ…

[スイングジャーナル誌ランキング:入っていません]

[初心者・入門者へのお勧め度:ほかの曲もよく聞くと曲はスローですが、マイルスのプレイ自体はかなり熱い物を感じます。ある意味この時期の一番調子が良かったときなのかも。東京でのライブ(どの曲なのかは私が持っている輸入版ではわかりませんが)も入っています]
posted by ロック小僧 at 18:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月05日

ジャズ名盤20(1970-1990)第二回発表ベスト9[Swing Street Cafe]【大御所二人のブルースにはまる一枚】

アメリカには絶対に売れる曲が作れる魔法のフォーミュラというのがある(あった!?)。それはジャズメンのバックでソウルシンガーが歌うというパターンで、グローバー・ワシントン・Jrのワインライト(1980)に入っているJust the Two of Usなんていうのがジャズファンとしては馴染みがある。

その少し前にクルセイダーズがランディー・クロフォードをフューチャーしたStreet Life(1979)のStreet Lifeなんてのも売れに売れた曲だ。このパターンはケニーGとマイケル・ボルトンにも受け継がれた。

ジャズのバックで歌があれば何でも売れるかというとそうでもなく、Fourplayなんかも歌入りの曲が結構あるが、意外に売れない。やはりソウルメンでないとだめなのだ。I'm a soul manでないと!ソウルとジャズはレコード屋では別分野になっているから違う分野のものなんだろうが、なぜかこれがアメリカでは黄金の必勝売れ筋パターンになった。

その後もクルセイダーズのピアノマン、ジョー・サンプルとランディー・クロフォードは息が合うのか、最近も二枚ぐらいCDを出しているが、それは今のブログの紹介している年代と合わないので、また後の楽しみにしておくとして、ではジャズ・ピアノメンとソウル・ギタリストの相性もきっと良いのではと思い、買ってみたくなるのがこの一枚だ。

Swing Street Cafe. Joe Sample-David T Walker. Verve. 1981.

Swing Street Café
Swing Street Café

って、ジョーサンプルはいいとして、このDavid T. Walkertって誰?とこのアルバムが発売された時代は現役ギタリストだった私も知らなかった。それでいろいろ調べると、どうもスティービーワンダーやらジャクソン5やら、マービンゲイやらフォートップスやらモータウン系を中心にセッションを行っていた超ベテラン・ソウルギタリストというではないか!

最近日本のドリームズカムトゥルーのアルバムに参加したそうで、最近になって日本でも注目されたってことなんだけど、こんなすごいキャリアのギタリストなのにこれまでぜんぜん気づかなかったなあ。高校三年から大学4年までソウルとファンクに狂っていた私としては、彼のプレイは間違いなく聞いているんだけど、クレジットまでは見てなかったなあ。

というわけで、この二人が合体すると果たしてどんな黄金のヒット曲が生まれるのか!

どりゃどりゃ針を下ろしてみよう。

す、すごいぞ、一曲目からレイチャールズのカバーでおなじみのHalleluja I love her soががんがん流れる。「これってブルースじゃん???(スウィング・ストリート・カフェってタイトルにはいつわりあり!)」なぜか、ジャズ・フュージョンの大御所とソウルの大御所が二人合体したら、全曲ノリノリのブルースアルバムになってしまった。

特に五曲目のWoke up this morningではウォーカーのぶっとい丸いギターのメロディーで始まり、ブルース・ピアノの流れるようなソロ、バックのホーンもがんがん吹きまくって、かっこいい。

最後のAfter hoursももう真っ黒けのスローな曲で、ジョーサンプルのルーツを思いっきり堪能できる。

二人ともとても楽しそうで、聞いているこちらもすっかりブルースにはまってしまうそんな一枚だった。


[スイングジャーナル誌ランキング:入っていません。そういえば母体のクルーセイダーズも入っていないなあ…]

[初心者・入門者へのお勧め度:レイチャールズやBBキングが好きな人は何十回でも聞けます]
posted by ロック小僧 at 20:04| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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