2009年08月30日

ジャズ名盤20(1970-1990)第二回発表ベスト5[Blow by Blow]

相棒の「女王の教室もどき」がクレーム処理の仕事の後、むっとしてしかめっつらいるのは、もしかしてこの仕事が好きでないからではなく、単に疲れているからかもしれない。体の糖分が切れるとえてして人はこうなる。

車で社に帰る夕方のこんなときは、本当だったらちょっとファミレスでも入って二人でお茶を飲むとかすれば元気が出るんだろうが、なにせこちらにそのガッツがない。

法務部兼クレーム処理班兼セクハラ対策班の部長としては、なかなか気楽に女性の部下を飯や飲みに連れて行けない。

こういうときは仕方がないから、元気の出る音楽でもかけよう…カーステレオのCDにちょっといつもとは毛色の違うCDを入れてみる。

隣に座っている女王もどきから今日はどんな罵声が飛んでくるか・・・

「部長・・・これは!」

「来た!」

Blow by Blow. Jeff Beck. 1975. Epic Records.
Blow by Blow
Blow by Blow

「やりますね、ジェフ・ベックじゃないですか。ジャズを聴こうとする人は身構えてしまって、他の分野の人たちを聞かないようにして、時には軽蔑したりしているもんなんです」

「???(心の声:それは一体、ほめてるの?けなしているの?)」

「でもこのブロー・バイ・ブローはすごいわ。この中のCause We've Ended as Loversなんかは、ジョン・スコフィールドが編集した100 Years of Jazz GuitarのCDにも選ばれてるし。曲名にTheloniusなんていうのもあるし」

「いや、すごいね、ほんと君は良く知ってるね。普通ロック好きはScatter Brainしか聞かないんだよね。変拍子が凄いとかいいながら」

と私がうれしそうに言うと、急にまた彼女の顔がしかめっつらの皮肉屋風になった。

「・・・部長は、なんでまたこんなのを聞いているんですか。部長のJazzの趣味は釣りで言えばあれですね、護岸にメバルを釣りに行ったはずなのに、フグばっかり釣ったり、海岸でキスの投げ釣りをしているはずが、シャコが釣れたり、そんな感じばっかりですね」

「え、い、いや、中学校からロック小僧でギターを弾いてたからね、これも中学で聞いたアルバムだなあ、あの頃あんまり好きじゃなくて、なんか難しい音楽をやる割にはギターのテクニックは今ひとつだな、なんて思ったけど、今聞くとすごいかっこいいね。どの曲もスリリングでリズムが黒くて。いつの時代にも通用するかっこいいアルバムだよね」

「まあ、中学のギター坊やでジェフベックよりうまいのがいたら見てみたいわ」

「・・・い、いやその、実は他のギター御三家のクラプトンやジミーペイジは歌が入っているはずなのに、ジェフベックだけインストなのが、中学生には馴染まなかったのかも」

「まあ、あるアルバムが好きになれない言い訳はいろいろできますわ。でも、部長がギターを弾いていたなんて知りませんでしたわ。あれですね、若いときにJazzが聞けなかったから今あわてて聞いているっていうわけですね。分かりました」

「いや、そういうわけでも・・・いや結構当たってるかも・・・CDの大人買いとか学生時代なんてできないし」

「まあ、いいですわ、どうぞジャズをいろんな角度からお楽しみください。そろそろ地下鉄の入り口だわ。この辺で降ろしてください」

「う、うーん、じゃあ、今度は社でお昼にでもゆっくりとジャズ評を・・・」

「そんな暇はありませんわ。あ、私はどっちかというとジェフベックなら、ロッド・スチュワートが抜けた後のジェフベックグループがかっこいいとは思いますね。それじゃあ」

そういうと彼女はまた地下鉄構内の入り口へと足早に消えていくのであった。

[スイングジャーナル誌ランキング:入っていません。ジャズ・フュージョンとはみなされなかったのでしょうか?]

[初心者・入門者へのお勧め度:かっこよすぎます。リターントゥフォーエヴァーとかラリーカールトンとかよりもかっこよいと思うのはロック小僧の血が騒ぐせい?リズムの取り方とか、最高です]
posted by ロック小僧 at 18:06| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月09日

ジャズ名盤20(1970-1990)第二回発表ベスト4[Mister Magic]

 今日もクレーム処理で女王もどきと一緒に頭を下げる。

 女王は顔立ちやふるまいも「女王の教室」に似ているので、彼女が頭を下げると相手の社長は気がひきしまるのか、緊張するのか、美人が丁寧に頭を下げるとそれ以上追求できないのか、「後はなんとかしましょう」ということで処理が終わる。

 ついでに私も温和な顔で「寛大なご処置ありがとうございました」と頭を下げる。

 車に乗って戻る途中、一度も一緒に夕食を食べたりしたことはない。法務部兼クレーム処理班はセクハラ事件処理班も兼ねている。大きい会社ではセクハラ事件処理班がないところはない。

 うっかり彼女に「今日は疲れたね、一緒に晩御飯でもどう?」などというと大変なことになる。20年前自分が入社したときはこうではなかった。大変な世の中の変化だ。

 仕方がないので、また今度ブログに載せようと思っているCDをカーステに入れてきまずい沈黙をごまかす。

女:「部長、これは・・・」

部:「来た!女王が反応した!」

Mister Magic. Grover Washington Jr. 1975. Motown.

Mister Magic
Mister Magic

女:「また、どうしていつも部長は王道をはずすんですか。グローバー・ワシントン・JRといえば、「ワイン・ライト」でも聞いていればいいじゃないですか」

ブログですでに紹介したんだとはいえないので、ごまかす。

部:「う、うん、いや、ほらこのプールの水底からざぼあっとあがってきてかに男みたいに泡をぶくぶく吹いているジャケットがすごくてね、いや、ぶくぶくがじゃなくて、肺活量がさ、サックスを吹く人は肺活量がすごいんだろね」

女:「…何を言ってるんですか、口から泡ぶくぶくはCDだったらライナーの裏写真で、表のジャケットは口からぴゅっじゃないですか」

部:「口から・・・」

 沈黙が訪れた。いかんいかん、ここでぎゃはははと笑っていいのだろうか。下手に笑うと後で何を言われるか分かったもんじゃない。

部:「ま、まあ、それに前回聞いたのがハービー・ハンコックのすごいファンク色あふれるヘッド・ハンターズだったから、これを続けて聞くとほとんど違和感ないよね」

女:「というか、この人のこのアルバムはファンク・マイナス・歌みたいなつくりじゃないですか。ギターがワーワーかけてソロを弾きまくったりして」

部:「(心の中で)ワーワーなんて知ってるんだ・・・相当音楽をやったんだな彼女は(心の声終了)」

女:「ワイン・ライトが好きな人が聞けるのは二曲目のPassion Flowerぐらいだわ。後はマイケルジャクソンに歌わせればマイケルのアルバムに、JBに歌わせればJBのアルバムになるわ、アオ!っていえばマイケルに、ゲロッパっていえばJBに」

部:「JBって、もしかしてジェームズ・ブラウン」

女「他にどんなJBがいるんですか」

部「(心の中の声)これは只者ではない、下手に知ったかぶりをすると大やけどかも…(心の声終了)」

女「まあ、でも仕方がないわね、この「ミスター・マジック」はモータウンのジャズレーベルから出ているわけだから、音が似ていてもしょうがないわ」

部「う、うん、そうだよね。でもすごい演奏力だよね、息が切れず果てしなく長く続く早いパッセージとか、周りのファンキーなリズムとの兼ね合いとかすごいセンスだ、この人しかこういうサックス吹く人いないよ、ワインライトしか聞かないなんてももったいないよ」

女「まあ、部長はもっと普通のジャズでも聴いたほうがいいわ。ここでおろして頂戴」

部「え、あ、地下鉄の駅入り口・・・」

こうして女王はまた地下鉄構内へと吸い込まれるように消えていった。

[スイングジャーナル誌ランキング:ワイン・ライトは入っていてもこれはやっぱり入ってないんですねえ。黒人音楽好きには止められない音ですが・・・]

[初心者・入門者へのお勧め度:高い演奏力、長い構成のしっかりした曲、リズムの取り方、いろいろ勉強になります]


posted by ロック小僧 at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月01日

ジャズ名盤20(1970-1990)第二回発表ベスト3[Head Hunters]

今日は社内食堂でランチ中に女王を見かけた。

なにやら彼女は一人で食べている。友人がいないのだろうか。性格がきついから仕方がないのだろうか。

しかし、こういうときも普段からまめに一言声をかけておくのが上司のエチケットだ。

部:「あー、おっほん、今日は外回りはなさそうだね。いつもここでお昼を?」

女:「別に今日はたまたまです」

部:「あ、あっそう、ちょっと前から聞こうと思ったんだけど、仕事に何か不満があったら、問題が大きくなる前に言ってね。この間、人のために頭を下げるのは好きではないってことだけど」

女:「いいんです、もうどうでも」

部:「あ、あっそう、ちょっと聞こうと思ってたんだけど、ジャズ詳しいんだね。驚いたよ。それでちょっと聞きたいんだけど、ジャック・ジョンソンの次は何を聞いたらいいかな。なんかお勧めはないかな」

女:「そんなの、好きなのを適当に聞けばいいじゃないですか。ルールがあるわけでもないし」

部:「そ、そう、そうだよね。じゃあ、こんなのはどうかな」

Head Hunters. Herbie Hancock. 1973. Columbia.

Head Hunters
Head Hunters

女:「・・・」

部:「なかなか良いと思うんだけど」

女:「いるんです、よくこういう。マイルスのメンバーの一人をずっと追いかけて聞いて。それで自分もリスナーとして成長していると勘違いしている人が。別に私と関係ないですけど」

部:「ま、待って、これは結構ジャズのエポックメイキングだと思うんだ」

女:「ただもう有名になってしまって、やることのなくなったハービー・ハンコックがファンクを取り入れただけでしょ、ばかばかしい」

部:「む、そうじゃないぞ。ただファンクを取り入れるんなら不自然なところとかぎこちないところがあるはずだが、一曲目カメレオンなんて、ファンクからジャズへそしてまたファンクのリズムへと変幻自在のカメレオンのようにシームレス(継ぎ目がない)だぞ」

女:「何を変なところだけ英語を使っているんですか。ファンクが力のあった時代だからジャズメンがファンクを取り入れようとしたのはただ当然の成り行きじゃないですか」

部:「いやー、そうじゃないぞ、ハービーでなきゃできないアルバムだ。三曲目Slyなんかもライナー読むとSlyのイメージはあっても彼の音楽から影響を受けて作ったわけではないと書いてあるし、これは完全にもうハービーワールドだな」

女:「ハービーワールドってなんですか。名前をかわいくすれば良いってもんじゃありませんよ」

部:「いや、がっちりした壮大な曲の構成力とか、リズムの取り方の黒さとか、やっぱり「処女航海」の時から脈々と流れる彼の血があるんだよ。なんかほかのジャズが黒人らしさを消そう、消そうとしているのに対して、彼は堂々と黒人にしかできない音楽を、しかも西洋音楽の理論に乗せて構築していく、そういうチャレンジをしているんじゃないのかなあ」

女:「ふーん、どこで読みかじった話ですか、これだから初心者はまったく」

女王は飲んでいたコーヒーの紙コップを置くと立ち上がった。

女:「でも、案外当たってるかもしれないわね。歌がないジャズは体で感じたとおりに思うしかないわ。今日は営業部と午後打ち合わせでその後そのまま帰ります。さようなら」


[スイングジャーナル誌ランキング:入っていません。ハービーの最高傑作だと思うのは私がファンク好きだからでしょうか?]

[初心者・入門者へのお勧め度:ジェームズブラウンとか、プリンスとかスライストーンが好きならハービーのファンクワールドを楽しめると思います]





posted by ロック小僧 at 21:26| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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