2009年07月26日

ジャズ名盤20(1970-1990)第二回発表ベスト2[A Tribute to Jack Johnson]

 今日もクレーム処理のため、「女王の教室」の女王もどきの係長殿と二人で頭を下げに行く。帰りは愛車のマークXに乗り込み、また無言のまま車を走らせる。しかし前回どうもこの女王もどきはジャズを相当知っているようだというのが分かったので、今日はいたずらをしてみよう。部下がどんな人間かを探るのも上司として必要なことだ。

CDを取り出し、ムイーンとディスクを差し込む。

女王もどき(以下、女):「何ですか、これは・・・」

来た!女王が反応した!

「何ですかと聞いているんです」

A Tribute to Jack Johnson. Miles Davis. Columbia. 1971

A Tribute to Jack Johnson
A Tribute to Jack Johnson

部:「さあ、何だろう?」

女:「またまがいものばっかり聞いて。この時期のマイルスならイン・ア・サイレントウェイかビッチェズ・ブリューを聞くのが常識じゃないですか。」

部:「うん、でもそのときのメンバーのハービー・ハンコックもジョン・マクラフリンも残っているし、なんとなく前の二つと合わせて三部作のような気がして、一体最後はどういう形に・・・」

女:「ちゃんと前の二つは聞いたんですか。変な音とか気持ち悪いとか思って放り投げたんじゃないでしょうね?」

部:「(心の中で)ぎく!よく分かっているな・・・結構やはりジャズを聴いているな,彼女は(心のつぶやき終了)」

女:「買ってきたジャズのアルバムが分からないからといってまた次々と新しいのを買ってくる、そういう人が多いんです。分からないなら分からないで、潔く認めればいいんです」

部:「うーん、確かに前の二つは難解だけど、なんか新しいことをやるには準備期間というか、慣れというか、そういうのがいるんじゃないかな。このジャック・ジョンソンはかなりグループとしてまとまってるよ、メンバーそれぞれがかっこいいし、何と言うかグルーブというか、ノリが出ているというか。きっと今回ドラムのビリー・コブハムが全体のノリをコントロ・・・」

女:「いいんです、そうやって聴いて分からないものを文字にすることで分かった気になっている人はずっとそうしていればいいんです」

部:「・・・」

女:「でも、確かに楽曲としてはこっちの方がノリがいいわ。まあマクラフリンとコブハムがロック色を出してるからってことでしょ」

部:「そうだよ、そう、きっとそうなんだよ」なんだ、女王もどきは分かっているじゃないか!

女:「それからプロデューサーのTeo Maceroがいろいろ切ったりつないだりしているようですけど、これも悪くないわ」

部:「うんそうだよ、そうなんだよ。ライナーを読むとなんでもマイルスはこのアルバムが最後にどう完成するか知らなかったらしい。Teoがいろいろやって最後にマイルスにこれは好きかいとできあがったのを聞かせたとき、マイルスが、「これはいい、マ○ーファ○カ○、また凄いことをやってくれたな」と言ったらしい。

女:「なんですかその下品な英語は。私たちの法務部はセクハラ処理も担当しているんですよ。その部長がそんな下品さでどうするんですか」

部:「いや、でもマイルスがTeoのことをそういう風に褒めて・・・」

女:「もういいです、ここで降ろしてください。こんな下品な人と同じ空気を吸うわけにはいきません」

部:「おいおい」

せっかく盛り上がりかけたのに女王の機嫌を損ねてしまった。仕方がないので、路肩に寄せられるところを見つけてマークXを停める。なぜかまた目の前に地下鉄構内への入り口がある。

女:「でも、まあ」女王がドアを開け、降り際に言う。

部:「え?」

女:「ジャケットの反り返ったマイルスは文句なしにかっこいいわ」


[スイングジャーナル誌ランキング:入っていません。いや、ビッチェズブリューよりかっこいいと思いますが?]

[初心者・入門者へのお勧め度:ジャズロック、それともロックジャズ?どちらか分かりませんがある種面白い融合です]


posted by ロック小僧 at 20:53| Comment(0) | TrackBack(0) | マイルス・デイヴィス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月11日

ジャズ名盤20(1970-1990)第二回発表ベスト1[Motions & Emotions]

のだめもどきが会社を去ってからまもなく私のところにも移動の命令が来た。法務部なるところへ移れと言う。実体は法務部というより内外のクレーム処理班兼セクハラ防止対策部だ。

断ろうかと思ったが、移動命令になにやら手書きで「ここをうまく問題なくこなしたら、君も取締役の一人よーん☆」と社長の文字らしきものが書いてあったので、その通りにしてみた。

結局やることといえば取引先やら下請けやらを走り回って頭を下げることだった。最初は他人のために頭を下げるのは嫌だったが、だんだんこれで数千人の首が飛ばないならそれもいいか、と考えるようになった。

外を回るのが多いので愛車のマークIIを使うことにしてガソリンを請求することにした。事故を起こした場合社用車扱いにしてもらえるかも確認した。

一緒に頭を下げに回る相棒ができた。三十ちょっとくらいの少し天海祐希に似た係長だ。私と同じ時期に移動してきてこの年ですでに係長と言うことは相当切れ者なのかもしれない。

いつも二人で相手に頭を下げてその後はむっとして私のマークIIに乗り込む。「今日の部長って、かっこよかった」なんてマークIIのコマーシャルでやっているようなセリフは彼女は言わない。

いつもは二人でむっとしてただ社に帰るのだが、なにやら毎日の沈黙が嫌になってきたので、今日はCDをかけてみた。

しばらくむっとして聞いていた彼女だったが、急にこういった。

「なんですか、この音楽は。いいかげんにしないさい」

「え!」

「いいかげんにしなさい。このピアノのタッチはオスカーピーターソンじゃないですか」

まるでTVドラマ「女王の教室」の女王様のようにそう言ったのだ。

Motions & Emotions. Oscar Peterson. 1970. Universal.

Motions & Emotions
Motions & Emotions

「え!?よく知っているね。でもいいかげんにしなさいってどういうこと」

「天下のオスカーピーターソンがサニーだとか、イエスタデイにエレノアリグビーなんてビートルズの曲を弾いてどうするんですか。ポップスじゃあるまいし。みっともない」

「え!みっともなくはないと思うけど」

「だいたい本物を聞かないと、本物の人間にはなれないんです」と女王がいう。

「ほ、本物って本物のオスカーピーターソンなんだけど」

「彼を聞くならせめてプリーズ・リクエストぐらいにしなさい。こんなポップスに染まった偽物を聞くなんて」と女王。

「えー、君、実はジャズを聴くんだね」

「ジャズくらい大人なら誰でも知っています。社会人の教養です」

再び沈黙が訪れる。女王の勢いに押されたが、ごほごほとわざと咳をして続ける。

「いや、あのプリーズだって、きっとあの頃流行った曲をお客さんがリクエストして即興でやったんじゃないかと思うけど?」

「部長もこんな偽物のジャズを聞いていると偽者になってしまいますよ。もういいです、ここで下ろしてください」

「え!まだ会社の途中だけど」

「後は勝手に電車で行きます。本物を聞かない人とは一緒にいたくありません」

さすが法務部いやもといセクハラ対策班に回されてくるだけの猛者だ…

仕方がないので、停まれそうな所に車を寄せ停車する。ちょうど目の前に地下鉄構内にもぐりこめる穴が開いている。

「まあ、なんかこのオスカーピーターソンが嫌いみたいだけど、ちょうど時代の変わり目でジャズがいろいろなものを取り込もうとした頃の物じゃないのかな。聞いているととてもリラックスできるし、ストリングスが気持ちいいし、6曲目のジョビムのWaveなんかすごいかっこいいよ」

「どこがかっこいいんですか。人の曲を流行っているっていう理由だけでやるなんて。私たちもそうです。なんで人の犯した間違いでいちいち頭をさげきゃいけないんですか。間違いを犯した人が自分で頭を下げればいいでしょう」

女王はそういって車を降りた。

そうか、それが嫌だったのか。彼女も何かここしばらくたまっていたんだな。

彼女が靴音をかつかつ響かせ地下鉄の駅へと吸い込まれていく。車のスピーカーからは、もうジャズが元に戻れないことを告げるかのように八曲目イエスタデイのソロが軽快なころがるような音で進んでいった。

[スイングジャーナル誌ランキング:入っていません。やはり一種の拒否反応が?]

[初心者・入門者へのお勧め度:最高にかっこいいです。新しい時代が始まったなあ、という感じです。ぜひ一枚手元においておくことをお勧めします。ちなみに録音は1969年みたいですね]
posted by ロック小僧 at 20:08| Comment(0) | TrackBack(0) | オスカー・ピーターソン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年07月04日

ジャズ名盤20(1950-1969)第二回発表雑談その4

のだめもどきが寿退社してしまった。最後の出社日は午前中にちょっとだけ顔を出して、みんなから花束を受け取り、みんなで「のだめもどき、ばんざーい、ばんざーい」とやって、終わってしまった。

なんでも厳格な資産家の息子と結婚するとかで私たちのような下々の者は結婚式に招かれないらしい。

少し寂しい気がする。私がブログで団塊世代は後世に残した負の遺産のツケを払えと書いたり、漫画のジョジョの話をしたりしてそれまで100人ぐらいいた読者の皆さんが一気に40人程度に減ってしまったことがある。ちょうどその後、のだめもどきが連載のレギュラーになってなぜか人気が出てしまって、最近では読者の皆さんの数は150人を超えているようだ。

そう考えると、のだめもどきは幸運を呼ぶ女神のようなものだったのかも…

意外にあっさりとしたお別れの後、自分のデスクに戻ると、なにやら、大きい茶色の業務用封筒がおいてある。

がさがさ・・・

中にはまた別の大きい袋と手紙が入っていた。

「部長殿。短い間でしたが、ジャズのお話が一緒にできてありがとうございました。これからも私もいっぱい聞いて立派なジャズウーメンになります」

のだめもどきがいつの間にかおいていった封筒と手紙だった。続きがある。

「これまでたくさんの名盤CDを部長の好意でいただいてきました。そのお返しというわけでもないのですが、私からのプレゼントです。中の別の袋を開けてくださいね」

むむ・・・名盤CDは貸したつもりだったのだが、やっぱりしっかりといただかれていたのか・・・

「最後に、私からお願いですよ。団塊のみなさんの悪口は書かないでくださいね。戦後の日本を支えた立派な皆さんですよ。それから漫画ネタもあきれられるから止めてくださいね。英語のライナーが読める人はあんまりいませんから部長の持ち味ですね。これを大事にしてください。それからできれば週二回連載するようにしてくださいね。忙しいときは仕方がないですが。それから部長はギターが好きなんだから、ギタリストを遠慮なく取り上げてくださいね。自分に忠実なのがなにより一番ですよ!」

読んでいて少し目頭が熱くなる。l

「では、がんばってくださいですよ。byのだめもどき」

ありがとう、のだめもどき。いったいもう一つの袋の中には何が入っているんだろう。がさがさ・・・

おお!?

Progressions 100 Years of Jazz Guitar. 2005. Sony BMG Music Entertainment.

Progressions: 100 Years of Jazz Guitar
Progressions: 100 Years of Jazz Guitar

これはすごい。すごいぞ。こんなボックスセットがあったのか。ボックスセットは普段無視しているから気が付かなかった。4枚組みで、1906年から2001年までのジャズギターの名曲がてんこ盛りで収められている。

1906年、Vess Ossmanて誰なんだ。1938年ジャンゴ・ラインハートは知っているが。私もぜんぜん勉強不足だったんだな。

すごい分厚い各ギタリストに対する説明書きが付いている。写真もすごい。この中の説明書きだけでもこのお値段は納得だ。

カルロスサンタナのヨーロッパとかジェフベックのCause we've ended as loversとかこんなものもジャズと考えていいのだろうか?恐ろしいほどのレパートリーの広さだ。一体誰が曲を選んだんだろう。なるほど、曲を選んだ人の一人はジョン・スコフィールドなのか。彼の1998年のHottentotという曲も入っている。きっとどれもこれも彼の愛着のある曲なんだろうなあ。

すごいぞ、すごいぞ、のだめもどき。

「ギタリストを遠慮なく取り上げてくださいね。自分に忠実なのがなにより一番ですよ!」

本当にありがとう。これから遠慮なくこれを参考に連載を続けていくよ。

[初心者・入門者へのお勧め度:大満足です。しかも選曲が後半ちょっとロックな人も出てきて、うーんつまりジャズというのは懐が広いんだなあ、と分かります。ギター好き以外が一気に聞くとげっぷが出ておなかがもたれるかもしれません]
posted by ロック小僧 at 20:11| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ名盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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